[6.断たれた道]

私は必死に小さな妹を庇い、ぎゅっと目を閉じていた。どれくらいの時間そうしていたかは分からない。でもふと気がつくと、辺りを包んでいた轟音は消え、目を開けるとうっすらと土煙が漂っていた。

そしてふらふらと立ち上がった私たちは、目の前に現れた光景に息を呑んだ。つい先程まで崖の対岸へと渡る道を形作っていた石橋は、中程からそっくり消え去っていて、それを支えていた木の根が寂しく空をつかんでいる。

落ちた橋

「どうしよう……」
途方に暮れた自分の口から言葉が漏れる。埃に霞む先に見える崖の対岸までは、とても飛び移れる距離ではなく、一切の道が閉ざされてしまったように感じたからだ。

「おねいちゃん!」
他に道はあるんだろうか。あるとしても、崖沿いに広がる鬱蒼とした森の中からその道を見つけるなんて、とてもじゃないけど出来そうにない。

「ねぇおねいちゃん!!」
不意にコートの袖をぎゅっと引っ張られ、崩れた橋の先に立って崖の底を見つめていた私は、びくっとしてよろめいてしまった。

「ちょっ、危ないじゃない!」
「あっちに道があるよ」
崖から転落する想像に心臓がばっくんばっくんしている私に構いもせず、クレアは崖から突き出す木の根の上に身体を乗り出して、その向こう側を楽しげに指差している。

私は一気に噴き出した嫌な汗を拭いながら、彼女が指差す先に目をやった。確かにそこには橋から直角に、岩壁沿いに続く道がある。木の根が邪魔しているのと崖がカーブしていて見え辛いために、今まで気がつかなかったらしい。

私たちは風雨にさらされ脆くなった太い木の根をなんとか乗り越えて、新たに発見したその道に降り立った。そこは岩壁から突き出した複数の鉄の柱で支えられている板張りの道で、頭上にはぼろぼろに朽ちた同じく木製の屋根が突き出している。

更に崖に面した側には、砂の海にあったテント状の建物で使われていた革と似たもので覆いが掛けられていた形跡もあったけど、それはすでにぼろきれのようになって風に煽られているだけだ。

足元に敷かれた板も腐ったりしているんじゃないかとビクビクしながら足を踏み出したのだけれど、意外にも道自体はしっかりとしているようだったので、私は妹の手を引いて先へと歩き始めた。もちろん一歩ずつ慎重に足元を確かめながらだ。

再びバスへ

それにしても、この道はどこに通じているんだろう。私たちは崖の向こうに渡りたいのだけれど、この道は対岸に向かうどころか昇りも下りもしない。ただ崖に添って奥へと続くだけ。

そんなことを考えながら緩やかにカーブする道を進んでゆくと、曲がり角の先で道が大きく広がっているのが見えた。どうやら崖に面したテラスのような場所に出てきたらしい。

そしてそこには、見覚えのある四角い物体が佇んでいた。私を砂の海からキノコの森へと運んだ、あの空飛ぶバスだ。

バスはテラスに横付けされており、私たちが歩み寄ると、そのドアを開いてがしゃりと階段を突き出してくる。正直言って、島の中央にある湖に向かうっていう確かな目標があるときにこのバスに乗ってしまうのは危険だ。どこに運ばれてしまうかまるで見当がつかない。

だけど崖の向こうへと渡る橋は崩れ、いま歩いてきたこの道も、見た限りではここで終点。もう他に選択肢は残されていなかった。

私とクレアは少しの間見つめあい、バスの中へと足を踏み出した。

再びバスへ
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